徒然法律ブログ

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争続???

2009年9月30日 | 阿部弘樹

 争続???もちろん正しくは「相続」です。「相続」は「争続」と揶揄されるように、争いごとが多いものです。おそらく、将来的にもこのような傾向は変わりがないでしょう。被相続人の隠し子が死後に見つかったというような稀なケース以外は、相続に関する紛争は既知の親族間の紛争です。親族なんだからみんな譲り合って解決しようよ、とは思うのですが、親族だからこそ積年の思いがあって、なかなか譲り合うことができないようです。長男の嫁と長女・次女が不仲だったような場合、親の死に伴って長男vs長女・次女の遺産争いに発展するということはよく見られます。親族どおしが遺産分割調停で面罵しあっている光景に接すると、財産を持つことが必ずしも人間の幸福につながるものではないな、とつくづく思ってしまいます。自分が築いた財産は、自分が使い切って死にたいものです(そうはうまく行かないでしょうが・・・)。

 ところで、相続という制度は、プラスの財産ばかりではなく、マイナスの財産(借金のことですね。)も相続します。自分は、借金は引き継がず、プラスの財産だけを相続したい、と思うのが人情でしょうが、法はこのような都合の良いことは認めてくれません。もし、被相続人には借金があるだけで、財産はないという場合「相続放棄」をしなければなりません。相続放棄は、原則として、被相続人の死後3か月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の申述をすることになります。3か月の間に、被相続人の財産関係を調査して、財産より借金の方が多い場合には、相続放棄をすべきことになります(限定承認という制度もありますが、税務上の問題もあり、あまり利用されていませんので、限定承認についての説明は省きます。)。逆に、被相続人の死後3か月以内に相続放棄をしなかった場合には、法の原則どおりに相続をしたものと扱われてしまいます。この3か月間は「熟慮期間」と呼ばれますが、熟慮期間中は、被相続人の財産関係をよく調査する必要があります。

 次のようなケースがよく相談されます。
「別居していた父親が死亡した。父親が亡くなったことは分かっていたが、父親にはめぼしい財産など何もないので、相続に関しては何もせずに放置していた。そうしたところ、父親が死亡してから半年ぐらいたった日に、信販会社から父親の借金を支払うようにとの請求書が届いたがどうしたらよいか。」というものです。先ほど述べたとおり、相続放棄ができるのは被相続人の死後3か月以内です。このような相談者のケースでは、法定相続分に従って借金を相続し、借金を支払わなければならないのでしょうか。
 親には何も財産もないし3か月の間に借金の請求もなかったとしたら、相続に関しては何らの手続きもしない人の方が大多数でしょう。上記のような結論には座りの悪さがありました。そこで最高裁は、「相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知ったときから民法915条1項所定の熟慮期間内に相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、3ヶ月の熟慮期間は、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算する」と判示して、上記相談者のようなケースでは、借金の存在を知ってから3か月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述をすることができる、としたのです。 ですので、上記のようなケースでは慌てず騒がず、家庭裁判所に相続放棄をしましょう。

 では、次のような場合はどうなるでしょうか。
「被相続人の財産としては土地がある。しかし、この土地には被相続人が事業資金のために借り入れた借金のために担保(抵当権)が設定されており、土地の評価額よりも借金額の方が多いのは確実である。そこで、相続人は全員相続放棄をした。」
 事業資金を貸し付けた金融機関としては、何とか土地を売却して一部でも貸付金を回収したいと考えるでしょう。でも、土地の所有者が不在の状況です。このような場合、金融機関(債権者)は、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に申立て、相続財産管理人を選任してもらいます。債権者は相続財産管理人を相手方として、土地の競売をするか、買主を探してきて相続財産管理人を売主とした売買契約を締結してもらって、貸付金の回収を図ることになります。
 相続財産管理人の資格は弁護士でなければならないわけではありませんが、多くの場合弁護士が選任されているようです。私も数件相続財産管理人の仕事をさせていただいていますが、これが結構面倒なのです。相続人を捜索するため公告(官報に掲載します。)などを繰り返し、相続債権者に弁済をし、もしも残余の財産があれば最終的には国庫帰属の手続をすることが仕事になりますが、手続があまりにも厳格すぎて(数か月置きに先に述べた公告等を繰り返さなければならないからです。)、任務終了まで早くても1年6か月ぐらいの期間はかかってしまいます。この点は、破産法の破産管財人の業務などの法規定などを参考にして、法改正が必要だと思います。

 さて、相続に関するあれこれを「徒然なるままに」書いてみました。
 このブログを読まれた方は、「相続」を「争続」としないよう十分お気をつけ下さい。
 それでも、万が一「争続」となったら、「感情的対立が激化する前に」、ひろむ法律事務所に相談を。