徒然法律ブログ

時の問題や出来事を法律的視点で綴る弁護士ブログ

パチンコと免責

2009年12月23日 | 事務担当 斉藤久美子

 免責とは、責任を免れること。
 法律事務所で免責と言えば、自己破産した者が債務弁済を免責されることを指します。
 「でも、弁護士さんに頼んで、裁判所に自己破産申立てをすれば、借金はチャラになるんでしょ?」
 「いいえ、そう簡単ではないんです。」
 自己破産を裁判所に申請するためには、大変な労力が必要だということをまずお伝えします。それは、自己破産をする方(家族があれば一家の問題として)の人生そのものを振り返ってみる作業に外ならないからです。
 そして、ここでのポイントは、何と言っても、多重債務の原因が免責を得られるものかどうかです。
 「どんな理由でお金を借りると免責がもらえないんですか。」
 「はい。いろいろありますが、わかりやすい例を挙げれば、パチンコとか競馬にのめり込んでしまったために借金が膨らんだケース等です。」
 「でも、私はパチンコが趣味なんです。競馬も馬が走っている美しい姿にうっとりして、好きですね。それに天皇賞とかの賞まであるのに、競馬をやったら免責が得られないなんておかしくありませんか。」
 「もちろん限度を超えていなければ大丈夫です。」
 「限度を超えるとは、どういう状態ですか?」
 「パチンコ等のギャンブル資金のための借り入れが多くあるような場合です。」
「だけど、その人がパチンコのために借り入れたかどうかなんて黙っていればわからないじゃないですか。」
「いいえ、それがわかるんです。」

 自己破産申立ての際には、各債権者から、その人の取引履歴を全て取り寄せます。パチンコやギャンブルにのめり込んでいた方の取引履歴は、非常に類似した履歴になっています。ほとんど毎日借入れを行い、それが他への返済には回らず消えているのです。弁護士も法律事務所の事務職員も一目で借り入れの原因がギャンブルだなとピンときます。もちろん裁判所からも取引経過の提出を求められることがあります。裁判所の書記官や裁判官の目は、もっと研ぎ澄まされています。嘘を述べても知らないふりをしても無駄です。
 かつて、当事務所で自己破産の申立てを行った人で比較的高齢の女性がいました。生活保護を受給していましたが、彼女の趣味はパチンコでした(パチンコをしていることが漏れれば生活保護は打ち切りになる。)。1人暮らしで唯一の楽しみがパチンコだったようです。きっと、パチンコ屋の騒音の中に身を置いてパチンコ台に向かっていると、妙に安心して集中力が発揮できたのだと思われます。そして、彼女のもう1つの問題は、過去にも自己破産の申立てをしたことがあったことです(現在は、前の自己破産から7年経過すれば、自己破産により免責を得ることが可能ですが、詳しい手続については当事務所の弁護士に相談下さい。)
 彼女はサラ金業者間でもパチンコで借金が増えたことが知られていたようです。
 当事務所で自己破産の申立てをしましたが、ある日サラ金業者から電話が来ました。「○○さんを昨日もパチンコ屋で見かけてるんだ。生活保護もらってパチンコして破産なんて、そんなこと許されないんだ」という内容でした。そのような電話は1度ではなく数回はあったと記憶しています。
 裁判所は、破産申立てを行った債務者の債権者に対し、免責についての意見を述べる機会を設けています。その債権者が彼女の免責について裁判所に異議を述べる可能性は相当にあったことになります。
平成17年1月に破産法が改正される以前は、彼女のように免責に問題がある場合は、ある程度の積立金を作り、それを各債権者の債権額に応じて按分配当することで、いわゆる償いを行って免責を得ていました(破産法改正後は、方法が変わりましたが、ここでは割愛します。)。
 しかし、彼女は生活保護受給者でした。彼女はすぐ後悔してパチンコを辞めましたが、後の祭りでした。生活保護費から積立金を準備することなど到底できない相談でした。結局、彼女は破産はできても免責は得られませんでした(破産と免責の違いはおわかりですか?)。免責が得られないことで、再びサラ金からの督促に怯えることになった彼女に、弁護士は「サラ金から請求が来ても、生活保護費からは払えません。と言ってつっぱねるんだよ」と因果を含めました。彼女がサラ金からの請求をうまく切り抜けられたことを祈るばかりです。
 嘘のような本当の話ですが、パチンコ屋を巡回して、自分のところの顧客がパチンコ三昧をしているかどうか調査をするマメなサラ金業者もかつては存在したのでした。
 彼女のことはほんの一例ですが、パチンコに限らずギャンブル全般、度を越した遊興、収入に見合わない高級品の購入等が原因で多重債務に陥った際に免責が問題になる事案は沢山あります。

 利息制限法の見直しが開始されてからサラ金業者も安易に貸し出しはしなくなったと聞きますが、借りる側にもモラルが求められています。
 趣味や道楽は奥が深く、道を究めるにはそれなりの出費も必要ですが、ギャンブルにのめり込んでサラ金との縁が切れない方、○○トンの新作が売り出される度の購入資金をサラ金で得ている方は、早急に2つの治療の必要があります。
 1つは、医者に依存症の治療を受けること、もう1つは、当事務所で多重債務の治療をすることです。