徒然法律ブログ

時の問題や出来事を法律的視点で綴る弁護士ブログ

東日本大震災の前と後

2012年4月2日 | 斉藤睦男

 電気も水道もガスも止まるという生活になりました。水や食料、ガソリンや灯油が手に入りにくくなり、電話も通じにくくなりました。気になる人の安否を確かめたくとも確かめられず、元気でいることをこちらから伝えたくとも伝えられないことが多くありました。このような状況をくぐり抜けて、震災の前と後とで何が変わったか、3つあげることができます。

 ◆生きていくうえで基本的なことかとても大切なものだということに気づかされました。食べることと、寝ることと、暖をとることです。そして、大切な人を想う気持ちです。

 ◆自分はそうではなくとも、避難所生活している人のことや家族を失ったり家を失ったりした人のことをリアルに想い描くことができるようになりました。

 ◆明日は今日の続きではない、今日と同じように明日が来るとは限らないんだということ、それだけに、いまの時間といま自分が接している人たちを大事に、大切にしようと思うようになりました。

 意外と読書ができました。震災の前から途中まで読んでいて震災後に読み終えた本も含めるとこの3週間で8冊読んでいます。空が明るいうちに帰宅するようになり夜いえで過ごす時間が長くなったことと、バスを待つ時間とバスに乗っている時間が長いためです。非日常的な情況の中でも読みきれる、読んで良かった本が何冊かありました。

 ■山本兼一「火天の城」文春文庫 平成23年3月20日読了。震災前に読んだ同じ作家の直木賞受賞作「利休にたずねよ」(PHP文芸文庫)が素晴らしく良く、「火天の城」にも手が伸びた。信長の命で安土城築造にあたる総棟梁の話。最後は安土城が炎上しまさに火天の城となる。時代背景が戦国動乱の世だけに震災後の空気に合ったのかもしれない。

 ■桜庭一樹「伏(フセ)贋作・里美八犬伝」文藝春秋(単行本) 3月27日読了。震災のかなり前に古本屋で購入していた本で「積ん読」状態だった本の1冊。桜庭一樹は「赤朽葉家の伝説」(創元推理文庫)を読んで物語好きにはたまらないと思ったが、その期待は今回も裏切られなかった。荒唐無稽だが人物(犬?)の感情と表情がリアルに感じ取れる。いまの現実はフィクション(小説など)をはるかに越えているが、現実を越えた荒唐無稽さに出会えるとのは吉とすべきか。

 ■星野道夫「魔法のことば」文春文庫 3月29日読了/同「旅をする木」文春文庫 3月31日読了。震災後に読んだ本で不思議と気持ちが平明になる本だった。前書は講演集。挿入写真も素晴らしく何度も見入った。後書はエッセイ集。どちらにも共通する大事な話が繰り返し出てくるが、同じ話が何度出てきても情景が色あせない。圧倒される大自然の中で生きていること、その中で人間はいかにちっぽけな存在なのか。それはアラスカも今度の震災も根本的には同じだ。本当に大切なものはシンプルなものだと気づかされる。

 音楽の話。9.11のときはNYの街のツインタワーのがれき場でビートルズの「イエスタディ」を人々が口ずさんだという。坂本龍一が何かで書いていた。そしてテロと戦争を乗り越える平和への祈りを込めて一青窈の名曲「ハナミヅキ」が生まれた。
3.11の直後は「アンパンマン・マーチ」がブレイクした。けれども、3.11では多くの港町では街そのものがなくなってしまった。そんなときにこれからどんな名曲が生まれるのだろう。それまでは「君と好きな人が百年続きますように」と祈りをささげよう。

 心が一番揺れ動いているのが、福島第1原発の放射能問題。ホラ見たことか、あんなに原発は危険だといってきたじゃないか、という思いと、これから再臨界⇒チェルノブイリ以上の大事故になったらどうしよう、そうはならなくとも大地や水の汚染のうえに、食物連鎖によって濃縮され食物を通じての内部被爆が進むという恐怖感とが交錯する。原発さえなければ、今度の震災はまだ自然災害だった。原発があるために人工災害・科学災害になった。このことについてはいずれ、また。

 さらには、専門家でなくとも、例えば夫婦でも同じようなことが問題になります。同じ景色を見ているはずなのに、夫が見ている景色と妻が見ている景色が異なり、話をしても噛み合ない、違和感を覚える、それが甚だしくなると離婚に至ってしまうのです。妻はこの事実をどう見ているのか、夫はどう見ているのか、お互いの立場になって、ちょっと冷静に考えることができれば、見える景色も同じものになるはずなのですが、人間には「感情」があるので、なかなかそれができないのです。